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COLUMN

2021年12月31日

自然の美しさを「写し」て「映す」

千總ギャラリーで開催している展覧会について、より深くお楽しみいただくために作品を深掘りしたり、会場では触れられていない時代や文化の背景などをご紹介します。

今回は「花と鳥をうつす」展で展示している「琳派百花模様型友禅染裂」に見られる着尺ならではのデザインについてご紹介します。

ものづくりの歴史が生み出した作品

「花と鳥をうつす」展は、花や鳥のモチーフの作品の展示を通して、千總が着物をつくるにあたっての思考のプロセスをご紹介するものです。またものづくりと所蔵品が近い距離にあるという千總ものづくりのユニークさも感じていただけます。

今回ご紹介する「琳派百花模様型友禅染裂」と神坂雪佳「草花図」は、千總が製作した染織品とその原画の関係にあり、「花や鳥などの自然の美をうつし取り、アレンジしながら着物へと落とし込む」という一連の流れをご覧いただける作品です。

左:型友禅染裂「琳派百花模様」(昭和10(1935)年製、千總蔵)
右:元となった作品 神坂雪佳「草花図」(明治時代末期〜大正時代(20世紀初期)、千總蔵)

絵画から着物へとデザインされていくにあたってどのようなアレンジがなされたか見てみましょう。

模様の再構成

ひとつ目は「柄の天地をなくす」ことです。
「草花図」では地面から空へ向かって伸びゆく草花が描かれていますが、「琳派百花模様型友禅染裂」では画面の上半分は上下が反転しており、現実の空間とは違う景色としてあらわされています。

柄の向きを上下互い違い組み合わせて、はっきりと天地を決めないのは着尺模様の特徴の一つです。その理由は着物の仕立て方にあります。

着尺模様:
着尺模様は着尺つまり一反の生地につける模様のこと。小紋・友禅着尺はこれに当てはまります。縫い目をまたがってつながる柄をあらわす絵羽模様に対して使われ、多くは型紙などを用いて一定の模様を繰り返して染め上げます。

着物は一反の生地を図のように裁ち、縫い合わせて仕立てます。ここでは仕立て上がった時にどのように構成されているのかわかるようパーツごとに色を変えて示しています。
注目していただきたいのは身頃(青のパーツ)です。

着物において、身頃の前面と背面とは1つのつながったパーツです。
着尺模様を染めるのに、柄の上下を一方向に定めると、前身頃を上向きに合わせると後ろ身頃は全て柄が下を向いてしまいます。そのような状態になるのを避けるため、着尺模様ではあえて天地をはっきりつけずにデザインします。

リピートする柄への意識

「琳派百花模様型友禅染裂」は画面の上半分は「草花図」の右幅、下半分は左幅の要素から構成しています。しかし画面右下を見ると、二輪の鉄線が描かれています。鉄線は「草花図」においては右幅にのみ描かれており、左幅の要素から構成している画面下半分には本来は描かれないモチーフです。

型友禅染裂「琳派百花模様」部分、右下に鉄線が描かれている

ここに絵画から着物、特に着尺模様へのデザインにおけるふたつ目のアレンジがあります。それは「上下にリピートしても繋がる柄にする」ことです。

柄を繰り返し染めるため、「琳派百花模様型友禅染裂」の上辺と下辺は着物になるときには隣り合います。つまり、上辺付近の鉄線と下辺右隅の鉄線が一連となり、柄のつながりを自然に見せることができるのです。模様構成に際して柄をリピートすることを念頭に置いていることがうかがえます。


展覧会のタイトルにある「うつす」とは、自然の美しい姿を「写す」ことであり、それアレンジして着物に「映す」ことです。この作品からは、“着物のデザインとして”美しく成立させるために凝らされた工夫が見て取れます。

花と鳥をうつす」展

千總ギャラリーについて

千總の所蔵品を展示するギャラリー1、現代の作家の作品を扱うギャラリー2にて、
同一のコンセプトのもとに展覧会を開催します。
パトロンとしてアートを支え、また生み出した歴史を背景に、
現代に工芸とアート、伝統と創造、過去・現在・未来が交差する場として、美との出会いをご提供します。